私が小学生の頃自分のお小遣いを使って漫画本を読むようになった時期には手塚治虫はもう過去の大家という位置づけでした。
当時は「ブラック・ジャック」や「ブッダ」、「火の鳥」など優れた作品を連載していましたがそういう感じでしたね。
それでも「お金を出して読む」価値があると思わせる作品が手塚作品に多いことは小学生の自分でも分かっていてそれなりに読んでいました。
手塚氏ほど内容を伴って猛烈な量を書きまくる作家は将来出てこないと思います。
少年漫画で多くの傑作を生み出した氏ですがあまり知られていない大人向け作品でも素晴らしい作品を残しています。
今回初めて読んでみた「人間ども集まれ!」もそういった大人向け作品です。
価格は高めですが650ページもある単行本で読み応えは十分です。
精子のしっぽは通常1本ですがそれが2本ある精子を持つ男・天下太平。
この男の精子から作られる人間は男性でも女性でもない無性人間。
無性人間を大量に生産し売り込むことで商売しようとする人間達。
手塚治虫は雑誌に発表した原稿を「原作」と呼んでいたらしく、単行本化する際にはかなりの量を削除したり書き直したりしたそうです。
この作品も例に漏れず単行本化の際に特に終盤のエピソードがごっそりと削除されていて、この単行本では削除された部分を同時に収録させて「完全版」と銘打っています。
読み比べると終わり方が180度違うと言ってもいい内容で読者としてはこれだけ大きな編集をして単行本化するのはあんまりだという気がします。
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